歯が痛くないので健康だと分かっていますし、定期検診は必要ないですか? blog
2020.12.15
ほとんどの人は、歯の痛みの有無を基準として口の中の健康を判断しています。
内科の場合、病気の発症の可能性を考えて定期検診を受診しますが、
一方で歯科の場合は歯の痛みの有無で健康状態を独断で判断する人が多いのです。
そのため、歯が痛くない人は定期検診を不要と考え、「私は歯が痛くないから虫歯はない」と自信を持ちます。
しかし、それは本当に正しいのでしょうか。
歯が痛くないことは、イコール口の中が健康だと100%断言できるのでしょうか。
歯が痛くない人でも虫歯の可能性がある
歯が痛くない人でも、診察してみると虫歯が発症しているケースがあります。
虫歯になると歯が痛くなるイメージを持っている人が多い以上、この診断に納得できないかもしれませんが、
実際に次のケースの虫歯では歯が痛くなることはなく、またケースとして決して稀ではないのです。
ケース1. 発症したての虫歯
虫歯になりかけの状態では歯が痛くならず、これは虫歯が歯の表面のみに留まっているからです。
虫歯で歯が痛くなるのは進行して象牙質に到達するためであり、
一方でエナメル質に覆われた歯の表面は痛みを感じることがなく、そのため初期の虫歯に痛みはありません。
ケース2. 神経を失った歯の二次虫歯
痛みを感じない虫歯の中で最も厄介なケースで、虫歯治療した歯が再度虫歯になることを二次虫歯と呼びます。
この時、最初の虫歯で神経を失っている場合は、いくら二次虫歯が進行しても痛みを感じません。
しかも、見た目は詰め物で処置されているため虫歯を自覚しづらく、進行を許しやすいのです。
ケース3. 進行して神経を失った虫歯
虫歯の痛みは進行することで増しますが、神経が死んでしまうと途端に痛みを感じなくなります。
そのため、重症化した虫歯ではむしろ痛みが一切ないのです。
もっとも、重症化する以前に痛みを感じるため、このケースにおいて虫歯を自覚していないことは考えられません。
…このように、歯が痛くならない虫歯として3つのケースが考えられ、
この点から分かるとおり「歯が痛くない=虫歯がない」とは言い切れないのです。
歯が痛くない人でも歯周病の可能性がある
口の中の病気は虫歯だけではなく、代表的な病気として歯周病も挙げられます。
歯周病は「歯の周囲の病気」の文字から連想できるとおり歯の病気ではなく、正確には歯の骨の病気です。
ここで問題となるのが、歯周病には目立った自覚症状がないということです。
実際、歯周病の自覚症状を挙げると次のようになります。
・歯肉が腫れる・変色する・張りがなくなる
・口臭がする
・歯石ができる
・歯が伸びたように見える(歯肉が下がる)
・知覚過敏が起こる
・歯が動く・グラつく
この中で痛みといえるのは知覚過敏くらいで、他の症状ではいずれも痛みを感じません。
そもそも知覚過敏もある程度進行した歯周病に起こる自覚症状、
つまり、例え歯が痛くなくて虫歯もなかったとしても、歯周病が発症している可能性があるのです。
自覚症状がないことの怖さ
歯に痛みを感じない虫歯と歯周病、自覚症状がなければ怖くないと考える人もいるかもしれません。
しかし、これらの病気は自覚症状がないからこそ怖いということを覚えておきましょう。
なぜなら、私たちが病気を自覚するきっかけは、ほとんどが発症による自覚症状によるものだからです。
頭が痛ければ頭の病気を予感して、胃が痛ければ胃の病気を予感して検査を受けますよね。
しかし、仮にこれらの病気で痛みがなければどうなるでしょうか。
おそらく、頭も胃も健康だと思ってしまって病気の発症に気づけないでしょう。
そして、病気の発症に気づけないことでその病気は進行してしまうのです。
痛みを感じない虫歯・歯周病にもこれと同じことがいえ、
痛みがないからこそ怖い病気であり、それが発覚したことは重症化を防げた意味でプラスと捉えてください。
定期検診を受診するメリット
定期検診を受診することは、虫歯・歯周病を早期発見できるだけでなく、
これらの予防効果が高まるメリットもあります。
例えば、歯のクリーニングをすることで歯磨きでは除去しきれないプラークの除去も可能。
また、ブラッシング指導を受けることによって歯磨きの技術が高まります。
さらに、生活習慣のヒアリング・改善のアドバイスは生活習慣病である歯周病の予防にもつながり、
食生活などによる虫歯発症のリスク・予防方法も学ぶことができるでしょう。
まとめ
いかがでしたか?
最後に、歯の痛みと健康の関係についてまとめます。
1. 歯が痛くない人でも虫歯の可能性がある :初期の虫歯・神経を失った歯の二次虫歯などは、痛みを感じない
2. 歯が痛くない人でも歯周病の可能性がある :歯周病は静かに進行する病気。虫歯のような痛みは感じない
3. 自覚症状がないことの怖さ :自覚症状がないからこそ、病気の発症に気づけず進行を許してしまいやすい
4. 定期検診を受診するメリット :虫歯・歯周病の早期発見だけでなく、予防効果も高まる
これら4つのことから、歯の痛みと健康の関係について分かります。
確かに、歯の痛みの有無は口の中の健康状態を知る目安になりますが、あくまで目安であり、
初期の虫歯や二次虫歯、歯周病などが発症している可能性もあるのです。
つまり、歯の痛みの有無は口の中の健康状態を判断する根拠にはならないということです。