歯が動いたような、浮いたような感じがします。原因としてどのようなものが考えられますか blog
2018.06.01
歯が動いたような、浮いたような感じがする場合には、歯の周囲の組織である「歯根膜」に炎症を起こしている可能性があります。考えられる原因とその対処法について詳しく解説したいと思います。
歯根膜炎によるもの
歯根膜とは、歯根と歯を支えている骨(歯槽骨)との間にある薄い膜の事を指します。歯と歯槽骨を繋ぐ役割や、噛んだ時に、硬さや柔らかさを判断し、歯に伝わる力を調整する役割があります。
その歯根膜が、何らかの原因により炎症を起こすと、「歯が動いたような、浮いたような感じがする」といった症状が出ます。
歯根膜炎を引き起こす原因
歯根膜炎を引き起こす原因は、大きく分けると2種類あります。細菌の感染のより歯根膜が炎症を起こしている「感染性歯根膜炎」、歯に強い力が加わるなどして歯根膜が炎症を起こしている「非感染性歯根膜炎」で
感染性歯根膜炎
・ 歯周病からの炎症
歯周病が進行すると、歯根膜や歯槽骨に炎症が広がります。「歯が動いたような、浮いたような感じがする」といった歯根膜炎の症状がある場合には、歯周病はある程度進行した状態である可能性が高くなります。
歯周病は、成人の約8割が罹患しているか、もしくはその予備軍だと言われています。しかし、自分が歯周病である事を自覚している人は少なく、歯根膜炎になって、はじめて歯周病に気がつくという人もいます。
歯周病は、放置すると、歯の周囲の組織はどんどん破壊されます。最終的に、歯槽骨の大部分が溶かされると、歯は抜け落ちてしまいます。歯根膜炎の症状に気がついたら、できるだけ早く受診するようにしましょう。
・ 虫歯からの炎症
虫歯になっている歯がある場合、虫歯菌が歯根膜に感染する事により、歯根膜炎を起こす事があります。虫歯が進行して大きく穴が開いている場合や、過去に治療した歯の被せ物の下が虫歯菌に侵されている場合があります。虫歯による歯根膜炎は、激しい痛みも伴う事があります。
・ 歯の神経の治療後
歯の神経の治療で歯根膜に刺激を与えた事が原因で、治療後に痛みが出る場合があります。歯の神経の治療をする際は、歯の先端まで器具を入れる必要があるため、歯根膜に刺激が伝わってしまう事があります。
ほとんどは、2〜3日で痛みは治まりますが、なかなか治まらない場合には、歯の神経を取り残している可能性もあります。歯の神経は複雑な形をしている場合があり、神経を取り残してしまうようなケースも多いので、早めに受診をして、再治療を行う必要があります。
非感染性歯根膜炎
・ 噛み合わせが一部だけ高くなっている
噛み合わせが一部だけ高くなっていると、その歯に強く力が加わるようになり、歯根膜に炎症が起きます。新しい被せものを入れた直後など、まだ噛み合わせがしっかり合っていない事があるので、注意が必要です。
・ 歯ぎしりや食いしばり
歯ぎしりや食いしばりにより、歯に過度な力が継続的に加わると、歯根膜炎が起こります。
歯根膜炎の対処法
感染性歯根膜炎の対処法
虫歯菌や歯周病菌の感染が原因となっている場合、歯の神経付近まで感染が拡大している事があります。感染して壊死した歯髄を取り除き、根管内をきれいに消毒する処置を行うのが基本です。
歯周病がある場合には、同時に歯周病の治療も行います。歯周病が進行しないように、歯石や歯垢を取り除き、定期的なクリーニングを行います。
非感染性歯根膜炎の対処法
噛み合わせが合っていない場合には、歯を少し削って、左右均等に噛めるように噛み合わせを調整します。また、歯ぎしりや食いしばりの癖がある場合には、寝ている間、無意識に歯を酷使するのを防ぐため、ナイトガード(就寝時に装着するマウスピース)を作ってはめる治療もおすすめです。
受診までの間注意すること
「歯が動いたような、浮いたような感じ」がする場合には、できるだけ早めに歯科医院を受診するのが望ましいです。しかし、お仕事の都合など、どうしてもすぐに受診できない場合には、歯根膜炎を起こしている歯をできるだけ使わないようにする事が大切です。ガム等、強く噛む心配のある飲食物は控えましょう。痛みが出ている場合には、応急的に市販の薬を飲むのも有効です。薬を飲む場合は、用法用量をしっかり守りましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。歯が動いたような、浮いたような感じがする場合は、「歯根膜炎」を起こしている可能性があります。歯根膜炎は、虫歯や歯周病によって引き起こされている場合や、歯に強い力が加わって引き起こされている場合があります。
歯周病が原因の場合は、既に歯周病がある程度進行している可能性があります。そのまま放置すると、どんどん歯周病は進行してしまいます。重度にまで進行すると、歯は使えなくなってしまいますので、歯を長く健康に保つためには、早めの治療が大切です。できるだけ早く受診をするようにしましょう。