歯周病と診断されたら:治療とセルフケアの要点 blog

2025.06.20

「歯周病」と診断されたとき、多くの方が不安を感じるでしょう。しかし、正しい知識と適切な行動があれば、歯周病の進行を止め、改善させることが可能です。
このコラムでは、歯周病の基本的な治し方から、歯科医院での専門的な治療、そしてご自宅で実践すべきセルフケアについて解説します。

歯周病とは?その影響

歯周病は、歯を支える歯茎や骨などの組織の炎症です。初期段階は歯肉炎で、歯茎の赤みや腫れ、出血が見られます。進行すると歯周炎となり、骨が溶け、最終的に歯が抜けることもあります。
主な原因は、歯に付着するプラーク(歯垢)内の細菌です。プラークが硬くなった歯石は歯ブラシでは除去できません。歯石は細菌の温床となります。
歯周病は、糖尿病や心臓病、脳卒中など、全身の健康にも悪影響を及ぼすことが分かっています。

歯周病の診断:何がわかるのか

歯科医院での診断では、主に以下の項目を確認します。

1. 歯周ポケットの深さ測定

歯と歯茎の間の溝(歯周ポケット)の深さを測ります。ここにプローブと呼ばれる器具を挿入し、深さを測定します。健康な歯茎の場合、歯周ポケットの深さは1~3mm程度ですが、歯周病が進行すると4mm以上になることがあります。深ければ深いほど、細菌が繁殖しやすい環境であり、骨が溶け始めている可能性が高いことを示します。

2. 出血の有無と歯茎の状態

プローブ挿入時の出血や、歯茎の腫れ・赤みを確認します。これらは炎症のサインです。

3. 歯の動揺度とレントゲン検査

歯周病が進行し、歯を支える骨が失われると、歯がグラつき始めます。歯科医師が指や道具で歯を揺らして、その度合いを評価します。

4. レントゲン検査

歯を支える骨の状態を確認するためにレントゲン撮影を行います。骨がどの程度失われているか、歯周病の進行度を客観的に把握することができます。
これらの検査結果に基づき、歯科医師は歯周病の進行度を診断し、一人ひとりに適した治療計画を立案します。

歯科医院での歯周病治療:専門的アプローチ

治療は「原因の除去」と「再発予防」が柱です。

1. プラークと歯石の除去(スケーリング・ルートプレーニング)

スケーリング

超音波スケーラーなどで歯の表面や歯周ポケット内のプラークと歯石を徹底的に除去します。

ルートプレーニング

歯周ポケット奥の歯根表面に付着した歯石や汚染物質を除去し、歯根を滑らかにする処置です。細菌の再付着を防ぎ、歯茎の再付着を促します。

これらの処置は、歯周病の初期段階や軽度の場合に特に効果的です。数回に分けて行われることが多く、治療中は痛みを感じる場合があるため、必要に応じて麻酔が使用されます。

2. 歯周外科手術

スケーリングなどでは改善が見られない、あるいは進行した歯周病には歯周外科手術が検討されます。

フラップ手術

歯茎を切開し、歯根や骨を直接確認しながら深い部分の歯石や炎症組織を除去します。

歯周組織再生療法

失われた歯周組織(骨など)の再生を目指す治療法です。歯周ポケット内を綺麗にした後に回復を促す薬剤を入れたりします。

3. 抗菌剤の使用

腫れたり膿が出ている時は、補助的に抗生物質などの抗菌剤が用いられることもありますが、基本は物理的なプラーク除去が中心です。

自宅でできる歯周病の治し方:セルフケアの重要性

歯周病の改善と再発予防には、日々のセルフケアが最も重要です。

1. 正しい歯磨き(ブラッシング)

歯ブラシの選び方とブラッシング方法

ヘッドが小さく、毛先が細いテーパー毛の歯ブラシがおすすめです。歯ブラシは1ヶ月に1回程度交換しましょう。
スクラビング法(歯と歯茎の境目に90度にあて小刻みに振動)やバス法(歯と歯茎の境目に45度であて歯周ポケットに入れるイメージで振動)など、力を入れすぎず、歯周ポケットのプラークを優しく掻き出すように磨くことが大切です。鏡を見て磨き残しがないか確認しましょう。

2. 歯間清掃具の活用

歯ブラシだけでは汚れの除去率は60%と言われています。そのため、歯ブラシでは届かない歯と歯の間のプラーク除去には、歯間ブラシやデンタルフロスが不可欠です。毎日使用することで、歯周病の進行を大きく抑えられます。

3. 洗口剤(マウスウォッシュ)の活用

洗口剤は、歯ブラシなどで取りきれない細菌を洗い流す補助的な役割があります。殺菌成分や抗炎症成分配合のものが歯周病には有効です。

4. 生活習慣の改善

喫煙は歯周病の最大の危険因子であり、禁煙を強く推奨します。バランスの取れた食生活や、ストレス管理も、免疫力維持のために重要です。

治療後のメインテナンスと定期検診

治療後も、再発予防のため定期的なメインテナンスとセルフケアの継続が不可欠です。
歯科医院では、3~6ヶ月に一度の定期検診が推奨されます。歯周ポケットの再測定、プラーク・歯石の専門的除去、ブラッシング指導などが行われます。定期的な検診は、早期発見・早期対処のために非常に重要です。

まとめ:歯周病はコントロールできる

歯周病は「完全に治る」というより「進行を止め、健康な状態を維持する」病気です。糖尿病などと同様に、適切な治療と日々のセルフケアで進行をコントロールし、症状を改善させることが可能です。
歯周病と診断されても、それは改善への「きっかけ」です。歯科医院でのケアだけでなく、自宅でのセルフケアを徹底することで、健康な口腔環境と全身の健康を取り戻しましょう。