お口の中の代表的な病気という点で何かと比較される虫歯と歯周病、
どちらが怖い病気なのかを考えた時、多くの人は虫歯と答えます。
おそらくそれは、感じる痛みの辛さを理由に虫歯の方が怖いと答えたのではないでしょうか。
確かに虫歯の痛みは辛いですし、一方で歯周病にはこのような痛みはありません。
しかし、「痛くない=怖くない」の解釈は間違っており、むしろ「痛くない=怖い」と考えるべきでしょう。
静かなる病気と呼ばれる歯周病は、静かなる病気だからこそ怖いのです。
虫歯になってそれを放置すると、やがて歯は溶かされて失われてしまいます。
そうならないためには虫歯を予防することはもちろん、虫歯になっても早く治療することが大切ですね。
ただ、例え虫歯になってもそれを自覚できなければ、虫歯に気づかず治療する機会が失われてしまいます。
ではどうやって虫歯を自覚するのか?…多くの人は、歯の痛みによって虫歯を自覚するのではないでしょうか。
そう、つまり痛みは病気を自覚する貴重なきっかけでもあり、自覚症状があるからこそ病気に気づけるのです。
それを理解した時、大きな自覚症状がなく静かなる病気と呼ばれる歯周病が、いかに怖い病気か分かります。
痛みがないから怖くないのは間違いであり、痛みがないからこそ歯周病は怖く、
なぜなら大きな自覚症状がないことで病気に気づきにくく、進行を許してしまいやすい病気だからです。
ようやく病気に気づいた時には既に重症化している…歯周病においてそれは稀ではありません。
歯周病が進行すると、やがて歯を失ってしまいます。
この理由としては、そもそも歯が安定しているのは支えがあるからで、その支えは歯槽骨と呼ばれる骨です。
歯周病になると歯周ポケット(歯の歯肉の境目の溝)が発生し、そこで歯周病の原因菌が繁殖していきます。
初期段階では歯肉に炎症を起こす程度の症状しかもたらさないものの、
進行に比例して歯周ポケットはどんどん深くなり、歯周病は歯の周りの骨にまで悪さをし始めるのです。
その骨とは歯槽骨であり、歯周病が進行することで歯槽骨は溶かされてしまいます。
歯槽骨は歯にとっての支えですから、それが溶かされることは歯が支えを失うことを意味しており、
支えを失った歯は不安定な状態になってグラつき、やがては抜け落ちてしまうのです。
これが歯周病で歯を失う理由であり、日本人が歯を失う要因として最も多いのが歯周病です。
もちろん、きちんと予防すれば歯周病は防げますが、問題は予防に必要な注意点が多いことです。
歯周病を予防する基本は毎日の歯磨きであり、いわゆるプラークコントロールが重要になります。
最も、お口の病気である歯周病の予防として、歯磨きが大切なのは誰もが想像できることでしょう。
しかし、歯磨きだけでは歯周病の予防は難しく、なぜなら歯周病は生活習慣病だからです。
例えば、疲労が蓄積すると身体の免疫力が低下するため、歯周病の原因菌に感染しやすくなりますし、
タバコを吸えばそれだけで歯周病になりやすく、発症のリスクは非喫煙者に比べて5倍以上の高くなります。
さらに栄養バランスの良い食生活ができなければ、やはり身体の免疫力低下で歯周病になりやすく、
歯周病の原因菌は女性ホルモンを栄養源とするため、妊娠時の女性だと歯周病になりやすい状態です。
歯周病はこれらの原因でも発症、またはそのリスクを高めるため、生活習慣の改善もしなければなりません。
進行すると歯が抜け落ちるという症状から、歯周病は高齢の人にのみ発症する病気に思われがちです。
しかし、歯周病の発症に年齢の制限はなく、歯周病の一貫と表現するなら小さな子供でも発症します。
小学校の歯科健診で歯肉炎と診断される子供がいますが、歯肉炎は初期の歯周病に該当するのです。
歯周病は進行度によって初期段階、中期段階、重度段階の3つに分けられますが、
初期段階の歯周病を歯肉炎、中期段階の歯周病を歯周炎、重度段階の歯周病を歯槽膿漏とも呼びます。
つまり、歯肉炎と診断された子供は初期段階の歯周病にかかっていることになるのです。
事実、近年では歯周病の低年齢化が問題歯されており、
夜更かし、学業や人間関係のストレス、乱れた食生活などがその原因として考えられます。
大人もまた同様で、日本人の成人のおよそ7割が歯周病とされており、国民的病気とも言われているのです。
いかがでしたか?
最後に、歯周病の怖さについてまとめます。
1. 進行を許しやすい :大きな自覚症状がなく、そのため歯周病になったことに自分でも気づきにくい
2. 歯を失う :歯周病は歯の骨の病気。進行すると歯を支えている歯槽骨を溶かしてしまう
3. 予防が難しい :生活習慣病である歯周病は、生活習慣の改善をしないと予防が難しい
4. 国民的病気 :歯周病は国民的病気と言われており、初期の歯周病に至っては子供でも発症する
これら4つのことから、歯周病の怖さについて分かります。
病気の進行だけで考えれば、自覚症状のある病気よりも自覚症状のない病気の方が怖いのは明白で、
なぜなら自覚症状がないことで病気の発症に気づけず、進行を許してしまいやすいからです。
静かなる病気である歯周病、それは静かだからこそ怖いのです。