30代女性 歯根が折れた歯を抜き顎の骨を再生させる治療を行ってからインプラントで欠損部位を補った症例Case
2025.05.27
治療前
治療後
治療中/その他
年齢・性別 | 30代女性 |
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相談内容 | 「右下奥歯の歯茎が腫れて、痛みが出ている」とご相談いただきました。 他院では、痛みが出ている右下奥歯(第1大臼歯)はいずれ抜く必要があると診断されていたものの、インプラント治療を行っていないクリニックだったため、当院に転院された患者様です。 |
カウンセリング・診断結果 | レントゲン撮影をして詳しく確認したところ、右下奥歯の歯根が折れていました。 この状態を放置すると、細菌感染による炎症が進行して歯を支える骨が溶け、隣の歯にも悪影響を与えるおそれがあります。 また、歯周病の検査で歯周ポケットの深さを測定したところ、8mmと深く、重度歯周病の状態です。 以上のことから、歯根が折れて重度歯周病を発症している歯を抜き、抜歯後に歯を補う治療が必要だと診断しました。 |
行ったご提案・治療内容 | 患者様には右下奥歯を抜く必要があることをお伝えし、同意いただきました。 抜歯後の欠損部分を補う方法として、以下の3つを提案しています。 ①両隣の歯を土台にして、橋を渡すように被せ物をするブリッジ メリット:固定式のため、取り外して管理をする手間がない デメリット:土台となる両隣の歯を削る必要がある ②人工歯根を顎の骨に埋め込み、その上から歯を取り付けるインプラント メリット:抜歯部位のみを治療できる。自然な噛み心地が期待できる デメリット:外科処置が必要なため治療期間が長い。自費診療なので比較的費用がかかる ③部分入れ歯 メリット:保険診療なので費用が抑えられる。治療期間も比較的短い デメリット:取り外し式なので、洗浄などの管理が必要になる。噛み心地は自分の歯に比べると劣る それぞれのメリットとデメリットを丁寧に説明したところ、患者様はブリッジとインプラントで悩まれていましたが、ブリッジは健康な歯を削らなければならないことがネックとなり、最終的に②のインプラント治療を選択されました。 治療に先立ち、歯周病の影響で歯の周囲の骨が溶けていることが予測されたので、術前にCT撮影を行います。 予想どおり、歯の周囲の骨が溶ける重度の骨吸収が認められました。そこで、抜歯と同時に骨補填剤を使用して顎の骨の再生を促す「GBR法」を用いて、インプラント治療に必要な骨量を確保するための「骨造成」を実施したうえで、インプラントを埋入する計画を患者様に提案しました。 骨補填剤とは、骨の欠損部を再建するために使用する歯科材料のことです。 患者様は、骨を再生させるための時間を含めると治療期間が長くなることに驚かれましたが、治療方法を十分ご理解いただき、同意いただいています。 まず、右下奥歯1本を抜くと同時にGBR法を実施しました。 抜歯後は、エルビウムヤグレーザー(モリタ社製)を使用して、取り残しがないよう丁寧に感染組織を除去します。続いて、骨補填剤の充填と、骨の再生を促すスペースの確保を行い、外部からの刺激や異物の混入を遮断する遮断膜を用いて縫合し、GBR法を終了しました。 術後の経過は良好で、骨の再生を確認できたため、GBR法の実施から約6ヶ月後にインプラントを埋入する手術を行いました。インプラントは、ストローマン社製のBLX4.0×8mmを使用しています。 インプラントの埋入手術から約2ヶ月後、インプラントの上に装着する被せ物を作製するために、口腔内スキャナー(3shape TRIOS4)を用いて口腔内の3Dデータを取得する光学印象を行いました。 後日、完成した被せ物を装着し、治療を終了しています。 被せ物は、高い強度と耐久性を持ち、審美性にも優れているジルコニアクラウンを採用しました。 現在は、定期的なメンテナンスで通院いただいており、口腔内を健康に保つプラークコントロールも良好です。 |
治療期間 | 約9ヶ月 |
おおよその費用 | 約480,000円 |
治療のリスク | ・外科処置後に腫れ、出血が続く場合があります ・持病をお持ちの方や、服用中のお薬の種類によっては、外科処置ができない場合があります ・メンテナンスを怠ったり、喫煙したりすると、お口の中に大きな悪影響を及ぼし、インプラント周囲炎などにかかる可能性があります ・糖尿病、肝硬変、心臓病などの持病をお持ちの場合、インプラント治療ができない可能性があります ・自費診療(保険適用外治療)です ・硬い素材の場合、他の天然歯を傷つけることがあります |