60代男性 虫歯や歯周病を治療し欠損した部位をインプラントで補って噛み合わせを回復した症例Case

2025.04.22

治療前

治療後

年齢・性別 60代男性
相談内容 約10年ぶりに来院された患者様より「歯が自然に抜けてしまった。ここ何年かは持病で歯科医院に通院できなかったので、しっかり噛むことができるように悪い部分をすべて治したい」とご相談いただきました。
カウンセリング・診断結果 拝見したところ、右上奥歯2本(第1大臼歯、第2大臼歯)と左下奥歯2本(第1大臼歯、第2大臼歯)が欠損している状態でした。
また、右下奥歯(第2大臼歯)も欠損していましたが、ここは両隣の歯を土台にして橋を渡すように人工歯を入れるブリッジで隙間を補っています。

レントゲン撮影で詳しく検査した結果、右下の親知らず(第3大臼歯)にだけ重度の歯周病が見られました。ここ以外の歯茎は、全体的に軽度から中程度の歯周病です。

加えて、左上奥歯4本と右下奥歯3本には進行した虫歯が認められます。
右下奥歯の虫歯のうち1本は虫歯がかなり進行しており、歯根の先に炎症を起こして膿が溜まる根尖(こんせん)病巣を発症していました。

虫歯や歯周病をこのまま放置すると、今後さらに歯を失うリスクがあります。
さらに現在は、左右の奥歯が失われているため奥歯で噛み合うことができず、その分前歯に過剰な負担がかかっている状態です。このままでは歯並びがずれたり、噛み合わせの悪さから歯や顎に痛みが出たりするおそれがあります。

以上のことから、口腔内を全体的に治療する必要があると診断しました。
行ったご提案・治療内容 患者様には、歯周病が進行した右下の親知らずは抜く必要があることを説明しました。
また、それ以外の部位に見られる歯周病は、歯の汚れを取り除く歯周基本治療を行うことで改善が見込めることもお伝えしています。

歯周病治療後は、左上奥歯4本と右下奥歯2本の虫歯を除去し、被せ物をして審美性と噛み合わせを修復します。
患者様は噛む力が強いため、被せ物は強度と耐久性に優れたジルコニアクラウンを提案しました。ジルコニアクラウンは自費診療なので費用はかかりますが、人工ダイヤモンドと呼ばれるほど高い強度をもち、噛む力が強くかかる奥歯に適しています。

根尖病巣を発症している右下奥歯1本については、細菌感染した神経を取り除き、神経が入っていた細い管を清掃して薬を詰める根管治療で改善を目指します。
しかし残っている歯の組織が少なく、将来的には抜歯になるおそれもあるため、被せ物は保険適用で対応可能な白い素材のCAD/CAM冠を用いることをお伝えしました。
CAD/CAM冠はジルコニアと比較すると強度はやや劣るものの、費用を抑えながら機能の回復が望めます。

欠損している右上奥歯と左下奥歯はブリッジでの治療が難しかったため、以下2つの治療を提案しました。
①顎の骨に人工歯根となるネジを埋め込み、その上に人工歯を取り付けるインプラント
メリット:周囲の歯に負担をかけず、天然歯に近い見た目や噛み心地が期待できる
デメリット:治療期間が長め。自費診療なので、ほかの治療に比べて費用がかかる

②欠損部位に取り外し可能な人工の歯を装着し、両隣の歯にバネを引っかけて固定する入れ歯
メリット:比較的治療期間が短く、素材によっては保険適用なので費用を抑えることができる
デメリット:インプラントに比べると耐久性に劣る。装着時に違和感を伴うことがあり、慣れるまで時間がかかる場合がある

それぞれの治療方法について丁寧に説明したところ、患者様は「しっかりと噛める治療がいいが、入れ歯には抵抗がある」との理由から、①のインプラントによる治療を選択されました。
また、歯周病や虫歯の治療についても、ご提案した内容で同意いただいています。

【歯周基本治療の流れ】
まずは全体的に付着している歯石を除去し、併せて正しいブラッシング方法を指導しました。この治療により歯茎の炎症を抑え、健康な歯茎の維持を目指します。

【抜歯と被せ物による修復の流れ】
右下奥歯に装着されていたブリッジを外し、歯周病が進行していた右下の親知らずを抜きます。
左上奥歯4本と右下奥歯2本の歯は、虫歯を丁寧に取り除いたあとで型取りを行ってジルコニアクラウンを作製し、装着しました。
根尖病巣がある右下奥歯は、しっかりと根管治療を行ったうえで、CAD/CAM冠を用いて修復します。

【インプラント治療の流れ】
左下の骨はインプラントの埋入に十分な高さと厚みがあったため、適応範囲が広く骨との結合力にも優れている、ストローマン社製のBLT4.1×10mmのインプラントを2本埋入しました。

一方、右上の骨は厚みが少なく、鼻の空洞である上顎洞(じょうがくどう)までの距離が近いことから、左下奥歯と同じサイズのインプラントを埋めるのは困難です。
そこで、骨が不足している部分にも対応可能な、太く短いインプラントであるメガジェン社製のAnyOne6.0×7mmを1本埋入しました。
患者様の骨の状態を活かしながら短く太いインプラントを用いることで、外科的な処置による身体的な負担と金銭的な負担、両方の軽減が期待できます。

インプラントと骨がしっかりと結合したこと、歯茎が治癒したことを確認して、インプラントの上部に取り付ける被せ物を作製します。
被せ物の素材は強度を重視し、ほかの部位と同じジルコニアを採用しました。

後日、完成した被せ物の形状や噛み合わせを確認して装着し、治療を終了しています。
治療期間 約1年6ヶ月
おおよその費用 約2,300,000円
(一部保険診療)
治療のリスク ・正しいブラッシングやメンテナンスを行わない場合、歯石の付着や虫歯が生じる可能性があります
・虫歯治療中に痛みを伴う場合があります
・まれに根管治療後も再治療、外科手術、抜歯などの処置が必要となる場合があります
・持病をお持ちの方や、服用中のお薬の種類によっては、外科処置ができない場合があります
・外科手術のため、術後に痛みや腫れ、違和感を伴います
・被せ物の装着に際し、天然歯を削る場合があります