50代男性 副鼻腔炎の原因となる奥歯を抜歯したあとインプラント治療を施した症例Case
2026.07.14
治療前
治療後
治療中/その他
| 年齢・性別 | 50代男性 |
|---|---|
| 相談内容 | 「左上の奥歯が食事のときに痛む」とご相談いただきました。ご家族が当院に通院中の患者様です。 |
| カウンセリング・診断結果 | 拝見したところ、左上奥歯(第1大臼歯)に痛みが認められました。 レントゲン検査でははっきりとした異常はなかったものの、歯周病の状態を調べるため歯と歯ぐきの間の溝である歯周ポケットを測定したところ、第1大臼歯の内側に9mmの深い歯周ポケットが確認でき、細菌感染による膿も生じていました。 歯周ポケットは一般的に2〜3mm程度が健康な状態とされており、9mmという数値は重度の歯周病に該当します。 さらに詳しく検査を行った結果、歯の根が割れていることが判明しました。 割れた部分を接着して固定しても、毎日の噛む力に耐えられず再発することが多いため、治療は困難です。 その後、患者様に左頬の鈍い痛みや鼻汁などの症状が現れたため近隣の耳鼻咽喉科を受診されたところ、歯が原因となって発症する副鼻腔炎と診断されました。 副鼻腔炎とは鼻の周りにある空洞(副鼻腔)にウイルスや細菌が感染し、炎症や膿がたまる病気です。 一般的に蓄膿症とも呼ばれ、長引く鼻水・鼻づまり・頭痛・顔面の圧迫感などの症状を引き起こします。 上奥歯の根は鼻の横にある副鼻腔(上顎洞)に非常に近い位置に存在していることがあり、歯の根の感染が上顎洞まで及ぶと副鼻腔炎を引き起こす場合があります。 今回はそのケースに該当し、左上第1大臼歯の感染が副鼻腔炎の原因と考えられました。 このまま放置すると、細菌感染がさらに周囲へ広がり痛みが改善しないだけでなく、副鼻腔炎が悪化する可能性があります。 以上のことから、感染源となっている左上第1大臼歯は抜歯が必要と診断しました。 |
| 行ったご提案・治療内容 | 診断結果について丁寧に説明したうえで、左上第1大臼歯の抜歯を提案し同意いただきました。 また、抜歯後に歯を補うために、以下3つの治療方法をお伝えしています。 ①部分入れ歯 メリット:外科処置が必要ない。周囲の歯を大きく削らずに治療できる。比較的短期間で治療が済む デメリット:取り外し式のため、噛んだ際に違和感が出る場合がある ②両隣の歯を削って橋渡しのような被せ物を入れるブリッジ メリット:固定式のため取り外しの必要がなく、比較的しっかり噛みやすい デメリット:両隣の健康な歯を削る必要があり、支えとなる歯に噛む力の負担が集中しやすい ③人工歯根を利用したインプラント治療 メリット:周囲の歯を削る必要がなく、欠損部位を単独で補うことができる デメリット:外科処置が必要であり、治療期間が比較的長くなる傾向がある 患者様は②ブリッジ治療と③インプラント治療で悩まれており、ブリッジの場合は支えとなる歯を大きく削る必要があることや将来的に支えの歯へ負担がかかる点を心配されていました。 最終的には、周囲の歯への負担が少ないことを重視し、③のインプラント治療を選択されています。 まず、歯が原因となっている副鼻腔炎の炎症を抑えるため抗生物質による治療を行いました。 炎症が落ち着いたことを確認したあと、左上第1大臼歯を抜歯しました。 その後、患者様は海外への短期赴任が予定されていたため、約1年半後に再度ご来院いただいています。 CT検査を行ったところ、抜歯した部分は良好に治癒しておりインプラント治療が可能な状態まで回復していることが確認できました。 さらに、インプラント埋入の計画を立てるため再度CT検査を行ったところ、インプラント予定部位は上顎洞との距離が近く、通常通りにインプラントを埋入すると上顎洞へ貫通する恐れがありました。 そこで今回は、通常よりやや短いインプラントを使用し、さらに「ソケットリフト」を併用する治療計画を提案し、同意いただいています。 ソケットリフトとは、インプラントを支える骨の高さが不足している場合に行う処置です。 上顎洞の粘膜を慎重に持ち上げ、そのスペースへ人工骨の材料である骨補填材を追加することで、インプラントを支える骨の量を補います。 インプラント埋入手術では、まずメガジェン社製のデンサーバーという器具を用いて、インプラントを埋め込むための穴を形成しました。 デンサーバーは、骨を削るだけではなく骨を圧縮して密度を高めながら穴を形成できる特殊な器具です。 そのため、インプラントがより安定しやすい環境を作ることができ、ソケットリフトを行う際にも上顎洞の粘膜を安全に押し上げやすい構造になっています。 デンサーバーを用いて上顎洞の粘膜を慎重に押し上げたあと、骨補填材のサイトランスグラニュールSを填入し、インプラントを埋入しました。 インプラントの種類は、ストローマン社製でやや太さのあるBLX5.5mm×8mmを使用しています。 その後、患者様には再度海外赴任の予定があったため、約1年半後に再来院いただきました。 再診時にはインプラント埋入部位は良好に治癒しており、しっかり骨と結合していたためインプラントの上に装着する人工歯を作製するための型取りを行いました。 人工歯の素材には、自然な白さと高い強度を兼ね備えたセラミック材料であるジルコニアを選択しています。 後日、完成した人工歯をインプラント専用のネジで固定し、治療を終了しました。 現在、患者様は左下奥歯も1本欠損しているため、この歯についても今後インプラント治療を検討されています。 |
| 治療期間 | 2年2ヶ月 (抜歯後の治療期間) 8回 |
| おおよその費用 | 506,000円 |
| 治療のリスク | ・外科手術のため、術後に痛みや腫れ、違和感を伴います ・メンテナンスを怠ったり、喫煙したりすると、お口の中に大きな悪影響を及ぼし、インプラント周囲炎等にかかる可能性があります ・糖尿病、肝硬変、心臓病などの持病をお持ちの場合、インプラント治療ができない可能性があります ・高血圧、貧血・不整脈などの持病をお持ちの場合、インプラント治療後に治癒不全を招く可能性があります ・噛み合わせや歯ぎしりが強い場合、セラミックが割れる可能性があります |

