80代女性 歯周病治療後にジルコニアセラミクスクラウンで下前歯の審美性を改善した症例Case

2025.06.19

治療前

治療後

年齢・性別 80代女性
相談内容 歯周病治療目的で来院された患者様より「歯周病を治したい。また、前歯の見た目もきれいにしてほしい」とご相談いただきました。
カウンセリング・診断結果 初回の来院時に口腔内を拝見したところ、全体的に歯周病を発症しており、歯周病の状態は軽度から中程度でした。これは、細菌感染によって歯茎に炎症が起きたり、炎症が進行して歯を支える組織に悪影響が出始めたりする段階です。

歯周病の基本治療を3ヶ月ほど行ったのち、患者様から前歯の見た目について相談いただいたため、詳しく検査した結果、下前歯3本には以下の問題を確認しました。

・軽度の虫歯
・上下の歯が、日常の食事や歯ぎしり、歯の食いしばりなどによって徐々にすり減る咬耗(こうもう)
・歯の外側を覆う硬い組織であるエナメル質の破折
・飲食物などの色素による着色

これらの症状を踏まえて、まずは歯周病をしっかりと改善したのち、前歯の審美性を整える治療が必要だと診断しました。
行ったご提案・治療内容 歯周病の治療については、毎日のブラッシングで汚れをしっかり落とせるよう練習することと、歯科医院で歯石を除去する必要があることをお伝えしています。
ブラッシングの練習と歯石除去を行ったところ、約3ヶ月で歯茎の状態が安定しました。

前歯の見た目については、患者様は矯正治療での治療を検討されていましたが、治療期間が年単位になることをお伝えしたところ、特に気になる下前歯を矯正治療以外の方法で改善したいと希望されたため、以下の治療計画を提案しました。

①歯型をとり、石こう模型上で歯の形をシミュレーションし、患者様にも術後の歯の形を確認していただく
②歯茎の形を整えるため、歯茎の位置を下げて歯の根っこの上部を出す外科手術「歯肉弁根尖側移動術」を行う
③前歯3本に、強度が高いジルコニアのフレームに天然歯のような見た目が再現できるセラミックを焼き付けたジルコニアセラミクスクラウン(被せ物)を装着する

患者様は、歯の色だけでなく歯の形も気にされていました。歯肉弁根尖側移動術をすることで歯茎の位置が下がって歯が長くなるため、バランスの取れた被せ物が作製しやすくなります。
一方で、もともと歯茎に覆われていた部分が露出するため、手術後に知覚過敏が起こるリスクがある点がデメリットです。

また、ジルコニアセラミクスクラウンは高い耐久性と審美性を併せもっていますが、自費診療なので費用が比較的高額で、噛み合わせの調整をしっかり行わないと、噛み合う歯に負担をかけるおそれもあります。

治療計画について、メリットとデメリットやシミュレーションの結果などを丁寧に説明し、治療に同意いただきました。

まず、歯肉の形を整える歯肉弁根尖側移動術を行います。
続いて、下前歯3本には精密に作製した仮歯「プロビジョナルレストレーション」を入れ、歯の形を患者様と確認してから、最終的な被せ物を作製するための型取りを実施しました。

後日、技工所で作製したジルコニアセラミクスクラウンを、噛み合わせや見た目を慎重に確認してから装着しています。

今後は、歯周病や虫歯の予防のため定期的に通院いただきながら、食べる・話す・飲み込むといった口腔内の機能についてもサポートしていく予定です。
治療期間 約4ヶ月
おおよその費用 約450,000円
治療のリスク ・装着に際し、天然歯を削る場合があります
・硬い素材の場合、他の天然歯を傷つけることがあります
・噛み合わせや歯ぎしりが強い場合、セラミックが割れる可能性があります
・外科処置後に腫れ、出血が生じる場合があります
・外科処置後のメンテナンスを怠ると、良好な結果が得られない可能性があります
・一部の治療を除き、自費診療(保険適用外治療)です